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    ◆変な小津映画(3)−変な「お早よう」

    • 2018.03.21 Wednesday
    • 05:05

     

    JUGEMテーマ:日本映画の監督

     

     

    変な「お早よう」 【参考文献】


     

    画面の枠を崩す

     

     津の映画では、通常は人物が画面の端から現れたり外れたりせずに物の陰でそれが起ります(小津作品のスタイル―正面からの人物撮影について)。これは小津が「画面のワク――絵画でいえば額ブチに当るものを非常に意識してしまう」ので(年寄りにも楽しい映画を)、人に限らず動物や乗り物など、動くものが画面の枠を崩すように出入りすることを嫌ったためです(ある監督によると、画面の枠を崩さないのは松竹の伝統だったらしいですが)。

     

     かしここにも例外はあり、中でも「お早よう」が目立つようです。それは部屋の中を人物が比較的カメラに近い状態で動き廻るときに多く現れます。この人物を近距離で撮る場面が他の作品とくらべて特に多いので、彼らが動き出すと画面の端から外れやすいのです。とくに福井(佐田啓二)が畳に座った状態で向きを変えながら、前進する処で半身現われるショットは珍しいと言えます。屋外では下の子が土手を駆け上って走り去る場面でも一度外れますが、このように屋外で走りながら直角に向きを変える動きも他に例がないでしょう。以下、それらのショットを挙げます(*付きは全身が出入りするもの)。

     

     

     「お早よう」17(*6)件

      立ち上がって頭が外れて、歩き出して右へ外れる(08:47)

      右から現れる(22:12)*

      右へ外れる(22:52)*

      下半身が左から現れる(22:59)

      頭だけ左から二人現れる(40:16)

      上半身が左へ二人外れる(42:36)

      頭だけ左へ外れる(47:48)

      右へ二人外れる(50:52)*

      足元を除いて右から現れる(51:17)

      右に半身かくれている状態から現れる(1:02:30)、非常に珍しいショット

      右から現れる(1:08:03)*

      頭だけ左へ外れる(1:12:45)

      左から肩から下の左半身だけ現れる(1:15:18)

      土手を駆け上りながら左へ外れる(1:18:28)*

      続いて右から現れる*

      立ち上がって肩から上が外れて、歩き出して左へ外れる(1:22:10)

      左から肩から上だけ二人現れる(1:24:06)、硝子戸ごしなので例外

     

     

     に「お早よう」前後の「彼岸花」「浮草」を挙げてみます。これら二作品ではこの現象があまり起りません。「彼岸花」は多そうですが、全身の出入りに限ると最後の二つだけとなります。

     

     

     「彼岸花」12(*2)件

      頭だけ右へ七人外れる(03:31)

      胴体だけ右から現れる(11:20)。硝子戸ごしなので例外、以後省略

      上半身だけ右から現れる(16:16)

      上半身だけ右へ外れる(22:16)

      上半身だけ右から現れる(28:20)。布越しなので例外

      上半身だけ左へ外れる(28:26)

      胸から上だけ右から現れる(58:32)

      頭と足元以外右へ外れる(1:25:24)

      頭と足元以外右から現れる(1:25:44)

      頭と足元以外右へ外れる(1:25:52)

      右へ二人外れる(1:33:36)*

      左へ六人外れる。全身は三人だけ(1:37:55)*

     

     「浮草」7(*3)件

      上半身だけ右から現れる(04:04)

      俯瞰のため上から二人現れる(06:04)

      右から十五人現れる(06:18)*

      右から三人現れる(16:16)*

      肩から下だけ左へ外れる(39:06)

      右へ五人外れる(1:05:00)*

      腰から下だけ右から現れる(1:39:38)

     

     

     たこの画面の枠を崩さないという特徴は、他の小津調と同じように後年になるほど強くなると思われるので最後の作品「秋刀魚の味」を挙げ、さらに役者に自由に芝居をさせたという反小津調の「早春」も挙げておきます。「秋刀魚の味」十(*一)件、「早春」二十七(*六)件、予想通り全身の出入りは前者が一番少なく、後者は多い結果となりました。

     

     

     「秋刀魚の味」10(*1)件

      肩から下だけ左へ消えて、すぐ左から現れる(17:21)

      肩から下だけ左へ消える(25:09)

      金網越しに頭だけ右へ二人消える(47:37)

      足元を除いて左へ二人消える(52:06)

      右へ消える(52:12)*

      足元を除いて左へ消える(52:20)

      頭と足元以外右へ消える(58:24)

      頭と足元以外右から現れる(58:38)

      肩から下だけ左へ消える(1:00:20)

      上半身だけ右から現れる(1:47:32)

     

     「早春」27(*6)件

      上半身だけ右から二人現れる(06:41)

      左から五人現れる(06:51)*

      左から五人現れる(07:12)*

      左から六人現れる(12:04)*

      上半身だけ左から現れて、頭だけ右へ消える(13:51)

      肩から下だけ左へ消える(19:43)

      肩から下だけ左から現れる(23:00)

      左から現れる(23:11)*

      膝から上だけ右から現れる(27:39)

      上半身だけ右から現れる(28:21)

      上半身だけ右へ消える(28:31)

      頭だけ左から現れて、左へ消える(29:44)

      上半身だけ右から現れる(39:12)。窓越しなので以後省略

      左から現れる(39:25)*

      頭だけ右へ消える(39:54)

      肩から上だけ左から二人現れ、左へ一人消える(53:28)。ドア越しなので以後省略

      暗がりを肩から下だけ左から三人現れる(1:02:55)

      柵越しに右から現れる(1:13:21)

      上半身だけ垣根越しに右へ消え、下半身だけ左へ消える(1:13:36)

      暗がりを左へ消える(1:39:50)

      暗がりを肩から下だけ左から現れる(1:40:23)

      暗がりを肩から下だけ左から二人現れる(1:41:14)

      下半身だけ右から現れる(2:05:05)

      右からボートの九人が現れる(2:17:20)

      橋の上を左右へ無数の人々が現れ消える(2:17:52)

      左へ二人消える(2:18:00)*

      肩から上だけ右から現れる(2:19:13)

     

     

     かし映写時間を考慮すると、一・五倍の長さ「早春」に対して「お早よう」が二十六(17×1.5)件(*九(6×1.5)件)となり、全身の方は逆転します。また「早春」は件数の割りにあまり目立ちませんが、それは台詞のないエキストラ的な人物や、屋内の暗いショットによるものが多いためと思われます。さらに白黒作品であることや、役者が自由に芝居をしていることも要因でしょうか。

     

     

    午前が土手の東、午後は西

     

    「お早よう」の初めと終りに、子供たちが土手の上で道草を食いながら、おでこを突き合う遊びをしています。初めの方は下校途中(図1 02:58)、後は登校時(図2 1:29:45)。ここで画面奥が帰宅方向、その手前であるカメラの後ろが学校のある側になります。この二つのショットを比べると、どちらも子供たちの影が画面に向って右奥から左手前にほとんど水平に伸びています。したがって、この二つは同じ時間帯ということになります(後者の方がより水平に近いので少し後)。さらに煙突の煙もほぼ真横に同じように流れているので、同じ日に続けて撮ったのでしょう。小津の日記もここの記述は一つあるだけです。昭和三十四年四月十四日「ロケ 六郷土手 子供たちのくだり 快晴 大変草臥れる」。画面奥の土手の先は低く見え、影もそちらから伸びているので南。日の射す右手の方角は西側で、時刻は夕方前となります。

     

    変な「お早よう」1 変な「お早よう」2
     図1  図2

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     りに登校と下校を正しい時間で撮ったとすると、日の当り方が変ってしまうので、そこは小津美学として、本当らしさよりも美しさを優先して同じような光景にしたのだと思われます。もう一つ担任教師が「おい、道草食ってちゃ駄目だぞ」と注意する登校時の場面がありますが(19:59)、ここでの影は画面奥から手前に、垂直に短く落ちているので時刻は正午ごろ。こちらは北に向かう多くの人物を後ろからも撮るので、彼らに正面から陽の射す時間帯を選んだのでしょうか。

     

     これらとは反対に宅地側からの土手は、綺麗に映すために陽が土手を正面から射していることが多く、少なくとも逆光ではありません(03:13)。土手に向って右側が北なので、背後の陽は東側になり時刻は午前中。このため土手の上の撮影は午後にしたのでしょう。土手下の二人の子供の食事も陽は西から射しますが、彼らは宅地から隠れる西側にいるので映りも良い(1:17:05)。ただし実際の場所は、宅地側と土手上が六郷、西はガス橋付近と異なるようですが。小津の日記に四月十八日「玉川の瓦斯橋近くの土堤で子供たちの食事のところとる くもるが一先ずこれで完了にする……草臥れる」とあります(小津は子役を使うのに、よく草臥れます)。

     

     最後に登校時の子供らが土手を駆け上がるショットでは、それまでと同じように、陽は後方の東側から射しています(1:28:26)。その少し前は家屋のわずかな隙間から、荷車を牽く人が通過するのが見えますが、これを映すときの陽は南側から射しており、同じ時間帯ではありません(1:27:14)。ここは土手からかなり引いて左側から撮っているので、右手の家屋の映る割合が高くなります。かりに最後の土手と同じ陽の向きにすると、右の建物がほとんど日陰になてしまいます。カメラを右に寄せて左側の建物を多く映せば、早い時間でも陽の当りは良いかも知れませんが、そうすると土手の上に見える鉄塔が、右側の建物の陰に隠れることになるでしょう。

     

     もあれ、「お早よう」土手際の撮影においては、宅地側は午前中、土手から西は午後の時間帯となっているのが分ります。

     

     

    家屋の配置

     

     家の節子(久我美子)が裏庭で洗濯物を干しながら隣の丸山家引越しの噂をする場面では、陽が丸山側から射しています(1:10:43)。脚本にある家屋の配置を見ると、丸山宅は林宅の南側なので陽は北に射しており、時刻はお昼頃と思われます。しかし、そこに書かれている配置は全般的に矛盾が多いことに気づきます。例えば林宅の裏庭の向かいは原口宅のはずですが、実際には物語に絡まない別の人物が住んでいます。そもそも原口宅のように向かいが絡むのは玄関側だけなのです。

     

     

     
    脚本の家屋配置:
      

       土   


       手   
       
     他の家     富沢    



     原口      林   
     大久保     丸山  
     他の家     他の家 



     
     


     

     

     

     さらに原口きく江(杉村春子)が玄関から自宅に入ろうとした時、向かいの富沢とよ子(長岡輝子)に呼び止められて防犯ベルの相談を受けますが(33:24)、今見たように脚本では林宅が向かいになっています。また終りの方で子供たちが土手を駆け上がる場面では、彼らは原口、大久保両宅の勝手口の間から原口側を正面にして右に走り去りますが(1:28:16)、これは土手の反対側です。

     

     の他も考慮して配置を正してみると、ちょうど南北(上下)の並びが反転することになります。これを次に示しますが、後の説明のために、正した方は実際にある土手ぎわの他の家を追加しておきます。

     

     

     
    正した家屋配置:
      

       土   


       手   
       
             丸山    












     他の家     大久保     林   
     他の家     原口      富沢  



     
     

     

     

     れで家屋の配置に関する矛盾はなくなりましたが、なおそれに関する人々の出入り等には疑問が残ります。以下にそれらの八点を挙げます。

     

     

    原口の息子、幸造が丸山宅にテレビを見に行った時、林宅の前を通るはずが、いきなり丸山の玄関前に来てしまう(07:02)

     

    林家の二人の子供が、福井のアパートに英語を習いに行くと偽って丸山宅にテレビを見にいく時(09:07)、玄関を右(北)に出て方向は正しいが、福井のアパートは逆(南 12:05)なので、それを見ていた母親(三宅邦子)にばれるはず

     

    原口きく江(杉村春子)が、丸山宅でテレビを見ている子供たちを呼びに来た時、玄関右手(北)から現われるので、これも向きが逆(10:45)。帰りは左のようだが、右から左にサスペンスを表しているのか

     

    きく江が会費の件で林宅に詫びに勝手口を出てから、祖母みつ江(三好栄子)の愚痴が二十秒以上あるが、その間に未だ、きく江は林宅に着いていない(31:50〜32:15)

     

    きく江が会費の詫びを済ませて玄関から自宅に入ろうとする処を、向かいの富沢に呼び止められ防犯ベルの相談を受けるが、話を終えると何故かきく江は勝手口に廻って、隣の大久保(高橋とよ)と「いいお天気」の言葉を交わしてから家の中へ入る(34:20)

     

    林家の節子が裏庭で洗濯物を干しながら隣の丸山の引越しの噂をする時、陽の向きは丸山側からであり北から射している(1:10:43)

     

    林家の二人の子供は兄実の担任教師(須賀不二男)の家庭訪問を受けて裏庭から逃げ出すが、突当りに丸山宅の壁があるのでその壁ははみ出しており(1:12:38)、Δ任琉越しの様子は分らないのではないか。彼らが勝手口の反対方向に廻り込む時は時間が戻っている(1:12:50)。そこから玄関の様子を伺う子供たちの影は家屋の方に伸びているので、ここも陽は北から射している。さらに北側の丸山宅がない!!!

     

     

     
    壁のはみ出した丸山宅
    (すぐ後に消える)
      
      丸山           
     
      林     裏
     庭

     

     

    駅前で福井に保護されて、自宅に戻った林家の子供たちは玄関の左(南)から現れるが、駅前にいたのなら向きが逆(1:24:04)。事件が解決したので左からなのか。富沢汎(東野英治郎)が泥酔して間違えて林宅に入った夜は右(北)から来て、左に出て行っており(1:07:54)、汎の妻とよ子が町(駅周辺)に買い物にでる時も北へ向かう(1:29:14)

     

     

     陽の射す向きのおかしいΝГ砲弔い討蓮△匹舛蕕睛曚鱚採錣謀てるためだったと思われますが、この二点の陽の向きに関しては脚本が正しいことになります(正しいというより、たまたま合っているということか)。Δ榔Δら当てると逆光になってしまうので反対を向いた家を使ったはずです。Г諒は林宅が両隣に挟まれているので、端にあって更にこちらも向きが逆の家、原口宅を使ったのではないでしょうか。前後が二件(富沢宅、他の家)なのも一致します。

     

     

    林家の血縁関係

     

     本での配役をみると、林家の節子の名字が有田と書かれています。これにより敬太郎(笠智衆)は婿に入っており、妻の民子と節子が実の姉妹だということになります。福井加代子(沢村貞子)が節子に話すとき、同窓生である民子を「お姉さんに、そう言っといてよ」と呼んでいます(22:34)。民子役の三宅邦子は「麦秋」でも、同じような反抗期の二人兄弟の子供を持つお母さんの役であり、その夫康一役も笠智衆です。さらに夫の実妹紀子(原節子)が同居しているわけですが、夫婦が同じ配役なので芝居に差を出すために同居する妹との続柄を変えたのでしょう。それが直接話に上ることはありませんが、敬太郎と節子がお互いに気兼ねしているようには見えます。

     

     ふたりが一緒に帰宅することはあっても(17:42)、会話する場面は二人だけのものはなく、民子を交えて、節子「ただいま」、民子「お帰り」、敬太郎「遅かったね」(43:48)、それと次男勇のジェスチャーを見た時の民子「何だろう?」、節子「何かしら? お兄さん分る」、敬太郎「いやあ」(59:24)の二回あるだけですが、後者はそれらしくも見えます。

     

     太郎夫婦の子供、実と勇が父母のどちらに似たのかを話題にする場面(58:40)にも含みがあるでしょうか。節子は本音を言わず敬太郎に遠慮しているようです。それに引き換え、「麦秋」の紀子は実兄を何時もやっつけていました。

     

     

    熟した構想

     

     津は「お早よう」を製作した翌年の昭和三十五年に、この作品について二十年も前に考えた話だと言っているので(巨匠の太陽・新人の太陽)、それは昭和十六年「戸田家の兄妹」の頃になります。また彼は戦前にサイレントの心理描写について以下のように語っていました。

     

     

    「『愛しています』としゃべる為と『お早よう』と云わせる場合と、俳優のアクションに違いが無くてはならないのは解り切った事だのにそれが嘗つて行われていない場合がしばしばあった…で…僕は映画の『常識』として必要なだけの心理描写、つまり一つのタイトルに対する一つのアクションのその層を深からしめ、より真実に近からしめ様と努めた」(/感映画について)

     

     

     こでは未だ台詞と役者の演技に関しての正当な演出方法を述べているだけですが、その後「お早よう」のテーマである「いざ大切なことを話し合おうとするとなかなかできない」(映画の味・人生の味)と、台詞の裏をかくような演出に発展していったのでしょう。この記事は昭和十一年一月号なので、昭和十年にはこの案があったはずです。さらに構想がわくまでに三年、「お早よう」は昭和三十四年の作なので、これを実現させるまでには、実に二十三年以上の期間があったということになります。「大事なことはなかなか言えない」ので(1:21:17)、「愛しています」の台詞は「アイ・ラブ・ユー」と英語に変えて子供に言わせています。

     

     小津は「お早よう」を作ろうと決心するまで、この案を他の監督に譲ろうとしていました(同上)。その理由は「いざ撮ろうとするとなかなか難かしい」ということですが、彼が先の記事の四年前の作品「生れてはみたけれど」で、子役を使うのに世話がやけて懲りてしまったことも原因の一つだったようです(∋劼匹發縫灰蠅燭)。それでもこのテーマに固執したのは、小津が子供の生態を描くことは好きだったと言えます。以後の作品でも主役こそありませんが子供は何度も登場して、「麦秋」ではミニチュアの鉄道模型の場面で大勢を扱っていました。

     

    【参考文献】

     

     (本文ここまで)




     

     

     

    ◆変な小津映画(2)−変な「早春」

    • 2018.03.18 Sunday
    • 12:00

     

    JUGEMテーマ:日本映画の監督

     

     

    変な「早春」 【参考文献】

     

     

     

    変な寄りや引き

     

     實重彦によると、ドイツの映画研究者ヘルムート・ファルバーが小津の「早春」について、「同じ人物に対する寄りのショットと引きのショットが、何ら他のショットを挿入することなく繋がれている」ので変だと指摘しているとのこと(敢包と野放し)。蓮實はそれが映される人物は一人であり、動きを伴わない場合に限るといいます。

     

    さらに同じ軸に沿った寄りにつながっていないとも言うのですが、これは単にカメラが寄るだけではなく、左右に移動するか向きが変るという意味にとれます。しかし、それでは前方向から横方向へなどの、普通のショットの切り換えと同じことになります。直接前後につながれるから変なのだと思われますが。実際、後に示す、蓮實が指摘しているところの三つあるショットのうち、二つは真っすぐ寄っていますが、杉山正二(池部良)の寄りでカメラが左を向き、彼の正面近くを映すものは比較的まともに見えます。

     

     こで一人だけの寄りや引きについて、人物の動きやカメラの前後以外の動きの大きいものを除いて、明らかにその人物を捕えながら行っているとみられるものを挙げてみます。*付きはカメラの前後以外の動きが殆どないもので、これが変な寄りや引きに当ります。「早春」はどちらの型でも蓮實の挙げた二件になります。しかし前後の白黒作品を見ていくと、前が「麦秋」一件(*一件)、「お茶漬の味」四件(*二件)、「東京物語」なし(*なし)、後の「東京暮色」は四件(*一件)となりました。どうやら、変な寄りや引きは「早春」だけではないようです。

     

     

    1 同じ人物に対する寄りと引きのショットが動きを伴わず直接つながれている

     

    • 「早春」2(*2)件

       

      1. 杉山宅で昌子の寄り(1:38:26)*
      2. 杉山宅で杉山の寄りと、続く昌子の寄りが対になっており(1:44:41)、
        杉山の方はカメラ左向き*
    • 「麦秋」1(*1)件
      1. 自宅で間宮周吉(菅井一郎)の引き(03:12)*

         

    • 「お茶漬の味」4(*2)件
      1. 職場で雨宮アヤ(淡島千景)の寄り、続いてアヤの引き(04:09, 04:17)*
      2. 職場でアヤの寄り(1:11:58)、姿勢が変るので時間が経過したように思える*
      3. 自宅で佐竹の寄り(1:27:40)、右に移動
      4. 自宅で妙子の寄り(1:35:32)、右に移動、小道具が移動、右腕の置き方が変る

         

    • 「東京物語」0(*0)件

       

    • 「東京暮色」4(*1)件
      1. 杉山周吉(笠智衆)の勤め先で竹内重子(杉村春子)の寄り(13:22)、左に移動
      2. うなぎ屋で重子の寄り(15:41)、右に移動
      3. 浜離宮の堤で明子の寄り(49:31)*
      4. 「珍々軒」で木村の寄り(1:53:31)、左に移動

     

     

     な寄りや引きに当るもの(*付き)について見ていくと、「麦秋」にある一件は冒頭での周吉の人物紹介の場面であり、引いた時に右に寄って、これから部屋に入ってくる子供のための空間を作ります。しかし暫くその子が現れないので少し戸惑いを感じますが、変ではありません。

     

    「お茶漬の味」は職場での雨宮アヤのものが二件あります。初めのものは横向きでこれも人物紹介になっています。二つ目は斜め前向きで、佐竹妙子と喧嘩別れをした直後の描写ですが、これらも変ではないようです。「東京暮色」のうずくまる明子は、カメラが真っすぐ前に寄っているので「早春」昌子の二つと同じ型ですが、その効果は良く出ていると思われます。

     

     れらに比べて「早春」の方は確かに変です。考えられる点としては人物の顔が見えることが挙げられるでしょうか。しかし前の昌子は横から撮られているので後のものほど強くは感じられません。加えて反復運動ですが団扇をあおいでもいます。その他のものでは「淑女は何を忘れたか」姪の節子(桑野通子)が「うち、明日の今時分もう大阪や」と言う処での寄りも直接つながれています(1:07:00)。それにも関わらずその効果を上げているのは、やはり後ろ向きであったり、少し体が左に動いたりしているからでしょう。

     

    さらに挙げてみると、「晩春」自宅で紀子(原節子)が父の再婚話で取り乱して、二階へ駆け上った後の寄り―顔が見えない(1:09:04)、「宗方姉妹」寺の庫裡で宗方忠親の寄り―横向き(06:23)、三村(山村聰)宅で化粧しながらの節子(田中絹代)の引き―横向き(1:03:13)、「秋日和」勤め先屋上でのアヤ子(司葉子)の寄り―横向きでカメラ左向き(1:32:40)、等もあります。これらをみると、一件だけある引きは直接つながれていても、人物が背景と一体になるので変ではないようです。寄りの方は、真っすぐに寄って顔が見えるものとして「宗方姉妹」の忠親がありますが、それは横向きで五倍にもなり二つの敷居を越えて行われるので、直接つながれている感じが弱くなります。

     

     上から変な寄りと引きの条件は、

     

          
    1. 一人だけの寄りに限る
    2. 人物が中心にある
    3. 人物が正面を向く
    4. カメラの向きが変らない
    5. カメラが大きく移動しない
    6. カメラが寄りすぎない

     

    となります。結果的にこれらを満たすのは「早春」後の昌子(1:44:52)だけのようです。更にここでは正二、昌子と続けざまに行われるので、後の方は寄りに慣れて真っすぐであることが目立ちやすいのだと思われます。また静まった暗い屋内での緊張した場面という、芝居上の効果もその要因となっているでしょうか。なお「東京物語」には二つの型とも該当がないので、「変な『麦秋』『お茶漬の味』」で見た、いきなり屋内を映す場面が少なかったのと同じように、小津調が強く現れていると言えるでしょう。

     

     

    カメラ固定の会話

     

     その他に「早春」を観て変だと思えるものに、ロング・ショットで主にカメラ固定のまま続く会話が九件あります。例えば土手の上で千代(岸恵子)が杉山(池部良)にうどんの会の報告をする場面は、会話を始めてから場面の最後に彼らが立ち去るまでずっとカメラが動かないので、まるで演劇の一場のように見えます。特にここでは寄りのショットが直接つながれていますが、それは二人が画面右方向に歩きながらであり、寄った時に人物が後ろにずれてしまうので映像が汚く、間のショットが抜けているのではないかとさえ思えます。小津は動きのあるショットのつなぎでは、間が飛ぶことを嫌い重なるようにしたのですが、ここはやり過ぎでしょう。

     

     他にも、二人が入場してから退場するまでカメラ固定の会話がつづく、同じような場面が二つあります。それは青木(高橋貞二)の職場ガソリン・スタンドでの彼と野村(田中春男―役者が多いので、配役に彼の名前が無い)、瀬田川での杉山と小野寺(笠智衆)。特にガソリン・スタンドの方は、寄りと引きの間にある正面からのショットが演劇そのままという感じがします。瀬田川の杉山と小野寺は途中で二度、会話を中断して学生のボートに視線を移しますが、ここも会話している時はすべて正面からのロング・ショットでカメラ固定となっています。

     

     ハイキングの場面での、会話しながら三分間ロングのままというのも他に例がないでしょう。「秋日和」のハイキングは二十秒の間、うきうきした無言の七人が、少し乱れてはいますが横一列に並ぶ純小津調(47:55)。厚田雄春談には「『早春』では、江の島海岸でのフル・ショットをこころみた。が、それもこれ一作だけのこころみで以後の作品にはまったく見られなかった」とあります(小津ロー・ポジションの秘密)。

     

     

    2 ロング・ショットで主にカメラ固定のまま続く会話

     

    • 「早春」9件
      1. 通勤時のホームでの電車待ち(07:28)
      2. 昼休みの土手で集団の右と左の二ヵ所を交互に撮るが、個々の台詞では動かない(10:51)
      3. 「ブルー・マウンテン」店内。カメラの視点はたびたび変るが二分三十秒以上アップがない(15:11)
      4. 江の島のハイキング(22:12)
      5. 田辺(須賀不二男―彼も配役に名前が無い)のアパートで麻雀。後半はアップが無い(37:24)
      6. 青木の職場で青木と野村(39:12)
      7. 土手の上で杉山と千代(1:38:48)
      8. 瀬田川で杉山と小野寺(2:16:17)
      9. 三石の職場で杉山と同僚。顔を真横から撮っている(2:18:48)

     

     

     さらに「早春」で小津らしくないところを挙げてみます。小津のオリジナル、視線を越えて切り返すショットが八件というのは他の作品に比べてずっと少ないですが、これはカメラ固定の会話が多いことから必然といえます。その他、駅に向かうサラリーマンの群がみんなばらばらに歩き、誰も見ていない俯瞰まであり(06:26)、昼休みの終りに土手から移動するサラリーマンの集団もばらばら(11:50)。人々のばらばらな動きは一般の映画では普通の光景ですが、小津映画ではなかなか見られないので目立ちます。

     

     

    3 視線を越えて切り返す会話―小津らしいこれらの場面は少ない

     

    • 「早春」8件
      1. ミルク・スタンドで野村とチャア子(山本和子―やはり配役に名前が無い)が右向き(54:03)
      2. 杉山宅で戦友の坂本と杉山が左向き(1:12:11)
      3. おでん屋「喜多川」でしげと客のツーさん(菅原通済)が左向き(1:15:27)
      4. 職場で杉山と荒川(中村伸郎)の立ち話で、杉山の左向きと荒川の顔が左で体は右向き(1:20:50)
      5. 同じく椅子に掛けながら、杉山の顔は右で体は左、荒川の右向き(1:21:28)
      6. 自宅で杉山と千代が左向き(2:01:48)
      7. 田辺のアパートで杉山と千代が左向き、台詞は千代だけ(2:15:01)
      8. 三石の下宿で杉山と昌子が左向き(2:21:11)

     

     

     以上のように、「早春」ではロー・ポジションこそ守られていますが、その他の大概の小津効果は極力抑えられており、普通に撮っているというより更に先へ行って反小津調です。彼は、「『早春』では変った試みをしましたがね。お客が見てコロッと変って見えるのはホンモノじゃないね」(会心の酒に酔う好々爺)、「いままで僕の映画作法は韻文的だったが、こんどのはあえて散文的に作ってみたんです。ぶっつけで俳優さんたちにもあまり芝居させないように、自然の演技をやらせてみたんです」(映画「早春」をめぐって)と言い、また妻昌子役の淡島千景は、「『早春』というのは、小津さんとしては珍しいことをおっしゃった作品なんです。というのは、……『早春』では、『みんな自由に動いていいよ』っておっしゃった」と証言しています(淡島千景談)。

     

     先ほど例を挙げましたが、役者に自由に芝居をさせたことの影響なのか、「早春」にはショットのつなぎで動きが戻ってしまうものや、逆に飛んでいるようなものが五つもあります。特にうどんの会では、体の動きではありませんが、野村の台詞「あの二人、どっちが先にモーションかけよったんや」の前にある寄りで、彼の一度上げた眼が戻るので気持ち悪い。

     

     

    4 ショットのつなぎが醜いもの

     

    • 「早春」5件
      1. 田辺のアパートの麻雀の引きで、引っ込めたはずの青木の腕が伸びる(38:10)
      2. 杉山宅で彼が流し台に向った時の寄りで、体の前に両腕が伸びて体重が掛かる(1:03:36)
      3. 杉山宅で戦友坂本が座り込んだ後、体を起した時の寄りで姿勢が戻る(1:05:58)
      4. 田辺のアパートうどんの会での寄りで、野村の上げた眼が戻る(1:29:15)
      5. 土手の上を杉山と千代が、歩きながらの寄りで後ろに戻る(1:38:48)

     

    【参考文献】

     

     (本文ここまで)




     

     

     

    ◆変な小津映画(1)−変な「麦秋」「お茶漬の味」

    • 2018.03.16 Friday
    • 05:05

     

    JUGEMテーマ:日本映画の監督

     

     

    変な「麦秋」「お茶漬の味」 【参考文献】



    子三部作と言われる「晩春」「麦秋」「東京物語」の傑作群の間には、「宗方姉妹」「お茶漬の味」と、二つの異色作が挟まれています。前者は他社で撮った、原作も配役もそこで決められていた作品(◆惱(姉妹』はどんな作品か)、後者は戦時中に書いた脚本に手を加えたもの。どちらも夫婦の問題を扱っており、他の三作との違いがはっきりしています。


    これは配役やテーマ、ストーリーについて言えることですが、よくみると「宗方姉妹」の後に続けて撮られた「麦秋」「お茶漬の味」に共通な、可笑しな演出のあることが分ります。それはカメラの移動撮影と、それの屋内への入り方についてですが、小津はこの変な演出を放棄することによって従来の形式に収まり、「東京物語」以降の映画を製作していったのです。


    移動撮影


    メラの移動は筒井武文(映画に文法はない)が指摘するように、「麦秋」「お茶漬の味」どちらも十四件と他の作品にくらべて突出しており(同数なのは偶然と思われますが)、小津はこの頃にカメラ移動の演出を模索していたと言えます。それらはショットの途中から動き出すものや途中で止まるものが多いのですが、途中から動き出して同じショットの中で止まるものはありません。これは観客が移動を強く意識してしまうためか(後述のように小津は「彼岸花」の頃、移動を意識させたくないと言っています)、あるいは両方を一つのショットで行なうのが難しかったのか。


    下に二作品のカメラ移動を示しますが、中には屋内での人物の縦移動(*付き)があり、それが次のショットにつながっている処もあります。これらと歌舞伎座での右奥への移動の二つは並の演出といえます。とくに歌舞伎座の方は両作品で同じように撮られています。


    「麦秋」のカメラ移動
    右奥、歌舞伎座で周吉、志げ、茂吉(24:07)、ショットの途中で止まる(24:24)
    前進、料亭「田むら」で紀子が去った後(31:38)、ショットの途中から動き出す
    継続、右奥、歌舞伎座で無人(31:43)、途中で止まる(31:51)
    右方、病院の窓外で無人(34:34)、途中で止まる(34:39)
    右方、病院の研究室隣室で間宮と田村が去った後(36:33)、途中から動き出す
    前進、間宮家で無人(1:11:19)、途中から動き出す
    継続、前進右、海岸で実と勇(1:11:24)*
    継続、前進右、実の寄りで勇が画面から外れ(1:11:37)、途中で止まる(1:11:43)*
    後退、ニコライ堂前で紀子と矢部(1:21:58)
    後退、料亭「田むら」でアヤと紀子(1:46:33)、途中から動き出す*
    継続、前進、間宮家で無人(1:46:45)、途中で止まる(1:46:54)
    クレーンによる前進、海岸で紀子と史子(1:49:52)、途中で止まる(1:50:11)
    前進左、海岸で紀子と史子(1:53:35)
    右方、大和の麦畑(2:03:53)

    「お茶漬の味」のカメラ移動
    後退、佐竹邸で無人(12:02)、途中で止まる(12:06)
    後退、佐竹邸で佐竹と妙子(13:17)、途中から動き出す*
    継続、前進、切り返して佐竹と妙子が去る(13:24)*
    後退、佐竹邸で無人(32:18)、途中で止まる(32:26)
    前進、職場で佐竹(35:37)、途中で止まる(35:43)
    右奥、歌舞伎座で妙子(48:28)、途中で止まる(48:43)
    前進、歌舞伎座で妙子と山内千鶴(三宅邦子)(50:21)、途中から動き出す
    前進、佐竹邸で佐竹と節子が去った後(54:20)、途中から動き出す
    前進、職場で佐竹(1:22:33)、途中で止まる(1:22:40)
    前進、会社の廊下で佐竹(1:24:19)、途中から動き出す*
    継続、後退、佐竹邸で無人(1:24:27)、途中で止まる(1:24:32)
    後退、佐竹邸で無人(1:36:06)、途中で止まる(1:36:16)
    左手前、路上で節子と岡田(1:53:48)、途中で止まる(1:54:03)
    前進、路上で節子と岡田(1:55:11)、途中から動き出す


    津映画のカメラ移動の中でも屋外で人物を追うものは、縦方向の「淑女は何を忘れたか」小宮と姪の節子(54:08)、「晩春」紀子と周吉(59:07)、「麦秋」紀子と矢部謙吉、横または斜めの「淑女は何を忘れたか」節子と岡田(20:36)、「戸田家の兄妹」節子と母(49:22)、「お茶漬の味」節子と岡田等々、たくさん挙げてもどれも自然に見えますが、それに比べて屋内のものは殆どが無用に思えます。それがある場面とない場面とを区別する基準が分りません。何か特別な意味があるのかと謎を掛けられているように感じます。とくに無人のまま動くショットは異様です。たとえ筋の運びに関するものであっても、一度観ただけでは理解できません。それが分ったとしても、その性質はO・LやF・I、F・Oのような小津自身がカメラの属性(⊆作を語る―生れてはみたけれど)、一種のごまかしの術と否定したものと変りないでしょう。


    誰もいなくなった屋内では、普通なら人物の後を追うようにして移動しますが、「麦秋」研究室の隣室のものは、机の前にあるカメラをそこに向って前進させられなかったためか、出口とはだいぶ離れた処から、より遠ざかる右方向に移動しています。さらに画面に大きく映された本棚によって出口が隠されてしまうので、何のためにあるのか良く分りません。おそらく動き自体は、この場面の初めにある窓外の右への移動に合わせたのでしょうが。とすると舞台の幕のようでもありますが、この場面だけ、それがあるのは不自然極まりない。料亭「田むら」での、紀子が振った男を覗き見しようとするアヤと紀子の移動場面は、その意図は理解できますが、他の可笑しなもに比べて逆にここだけ浮いています。


    お、「晩春」では七里ヶ浜のサイクリングで走り去る自転車を追うようにカメラがパンして(22:10)、「麦秋」は砂浜の向こうに隠れる人物を映し出すために、そこを乗り越えるようにクレーン撮影が行われました。どちらも監督お気に入りの原節子を撮るために弾けたかったからでしょう。そのため、この二つは派手さが目につきよく話題になりますが、撮り方としては自然のように思われます。


    小津はある時はカメラ移動はよくやり、とくに前後の移動が好きだと述べており、その一方でカラー第一作「彼岸花」撮影時には「移動を意識させたくない。知らん間に移動できる場合はやっている」と言っていたのですが(⊆鬚聾鼎い曚斌がよい)、実際はその二つ前の作品「早春」にある、江の島ハイキングでの十六ショットにおよぶ長い々々横移動が最後となりました(21:50〜24:00)。ここで懲りてしまったのか。ただし、その前後には杉山の勤め先の無人の廊下での前進が、ハイキングの予定を立てる前(10:26)と、お好み焼屋の前(41:26)にありますが、これらも意図は不明です。不倫への道しるべということか。

     


    屋内への入り方

    津映画でカメラが屋内に入る時は、先に建物の外観やその付近を示すのが基本です。しかし同じ建物の中を何度か映す場合、二度目以降はいきなり屋内に入ることもあります。「麦秋」「お茶漬の味」にはこれが特に多く、どちらの作品も前者の場面を上回るのですが、その他の作品は大よそ半数以下しかありません。これもカメラ移動の多さと同じように、小津映画の型を崩した演出といえます。


    そこで、「晩春」から「秋刀魚の味」までの作品について、いきなり屋内を映す場面と、建物の外観やその付近を映すそれとの多少を比較してみます。ただし「お早よう」「浮草」の二本は作風が他と異り、主旨に合わないので省略します。また便宜上、建物の外観やその付近を、建物の付近とします。題名の下の数値は「晩春」を例にすると次のようになります。

    「12/17(71)」=「いきなり屋内を映す/建物の付近を映す(上記の%)」
    「7/22(32)」=後述のいきなり屋内を映す場面にある三種の変種を建物の付近とみなし、「晩春」はこの変種が五件あるので%は「(12−5)/(17+5)=32」
    「29(39)」=「屋内に入る回数(最長の「早春」と同じ映写時間とした時の上記の回数)」を表し、「早春」一四四分、「晩春」一〇八分なので、「12+17=29(29×144/108=39)」

    「小早川家の秋」には、同じ敷地内と思われる小早川家と、その事務所間の移動が四件ありますが、それらを移動とは見なさず、全体の件数から除いたものを[……]で示します。


    めに、いきなり屋内を映す場面と、建物の付近を映すそれとの比などを示し、その後に実際のショットを示します。


     嵌媾奸廖   12/17(71) 7/22(32) 29(39)
    ◆崕(姉妹」  7/19(37) 3/23(13) 26(33)
    「麦秋」    18/17(106) 7/28(25) 35(40)
    ぁ屬茶漬の味」 13/10(130) 5/18(28) 23(29)
    ァ崚豕物語」  9/29(31) 2/36(6)  38(40)
    Α崛畚奸廖   10/31(32) 3/38(8) 41
    А崚豕暮色」  6/28(21) 2/32(6)  34(35)
    ─嵌犂濂屐廖  。掘18(39) 1/24(4)  25(31)
    「秋日和」   15/21(71) 4/32(13) 36(41)
    「小早川家の秋」10/14(71) 3/21(14) 24(34)
                            [6/14(43) 1/19(5)  20(28)]
    「秋刀魚の味」 8/19(42) 2/25(8)  27(34)

     

     

    分りやすくするために、先に上記の数値をグラフで示します。

     

     

      屋内への入り方

     


    いきなり屋内を映す場面には、屋内から他の建物の中へ直接移動するものが多いのですが、まれに移動元の屋内から一旦その付近に出て、離れた建物の中に移る場合もあります(*付き)。これはいきなり屋内を映す場面の変種ですが、移動前の余韻を残すためのものでしょう。また電話による移動もこの変種とします。


    カーテン・ショット(C・S)は屋外の風景が原則ですが、ここでは移動元の屋内の最後や、移動先の屋内の初めに映される誰もいないショットを指し、これもいきなり屋内を映すものの変種です。ただし人物が映される場合でも、台詞のないエキストラ的なものは無人とみなして、これは含みます。なおC・Sというのは小津映画におけるF・I、F・Oに代るものとして一枚の風景で表されますが、それが演劇の幕に似ていることから南部圭之助により、「戸田家の兄妹」のときに命名されました(小津安二郎の怒り)。


    建物の付近を映す場面にある継続とは、一度近くの敷地外に出て再び同じ屋内に入るものを指します。これは時間の経過を示したり、他の人物が屋内へ入ることによる場面の推移を表しています。

     

     

     嵌媾奸12/17(71) 7/22(32) 29(39)

      〔いきなり屋内を映す〕

      小料理屋「多喜川」から曾野宮宅(17:17)

      七里ケ浜から田口まさ宅(24:16)

      田口まさ宅から曾野宮宅(26:18)

      喫茶店「バルボア」から劇場カーテン・ショット(33:24)

      丸の内の歩道から曾野宮宅C・S(34:50)

      田口宅から曾野宮宅(47:28)

      曾野宮宅から能楽堂(52:01)

      能楽堂の帰り道から北川アヤ宅C・S(1:00:15)

      八幡宮の境内からアヤ宅(1:13:01)

      アヤ宅から曾野宮宅(1:15:19)

      龍案寺方丈の前庭から京都の宿屋(1:30:25)*

      曾野宮宅C・Sから小料理屋「多喜川」(1:41:28)

      ―――――――――――――――

      〔建物の外観やその付近を映す〕

      円覚寺の庫裡《くり》(02:52)

      曾野宮宅(06:40)

      継続、曾野宮宅(08:35)

      小料理屋「多喜川」(14:43)

      継続、曾野宮宅(27:08)

      喫茶店「バルボア」(32:19)

      田口(杉村春子)宅(42:05)

      継続、曾野宮宅(48:14)

      継続、曾野宮宅(50:10)

      曾野宮宅(1:04:05)

      京都の宿屋(1:21:17)

      継続、京都の宿屋(1:22:08)

      京都の宿屋(1:25:57)

      龍案寺(1:29:05)

      曾野宮宅(1:36:45)

      継続、曾野宮宅(1:41:12)

      曾野宮宅(1:44:45)

     

    ◆崕(姉妹」7/19(37) 3/23(13) 26(33)

      〔いきなり屋内を映す〕

      京都大学から寺の庫裡(06:14)

      呑み屋「三銀」から酒場「アカシヤ」C・S(34:40)

      箱根の宿C・Sから三村宅C・S(45:10)

      田代の家具店から真下宅C・S(58:33)

      築地の宿C・Sから呑み屋「三銀」(1:32:53)

      呑み屋「三銀」から三村宅(1:36:38)

      寺の庫裡から田代の家具店(1:41:08)

      ―――――――――――――――

      〔建物の外観やその付近を映す〕

      京都大学(02:17)

      薬師寺の金堂(10:15)

      田代の家具店(13:04)

      寺の庫裡(19:44)

      酒場「アカシヤ」(22:38)

      三村宅(26:29)

      呑み屋「三銀」(32:25)

      築地の宿(39:25)

      箱根の宿(43:40)

      寺の庫裡(51:47)

      田代の家具店(54:25)

      三村宅(1:02:58)

      築地の宿(1:09:45)

      酒場「アカシヤ」(1:13:30)

      三村宅(1:20:47)

      築地の宿(1:27:05)

      寺の庫裡(1:39:11)

      薬師寺の金堂(1:43:46)

      喫茶店(1:48:23)

     

    「麦秋」18/17(106) 7/28(25) 35(40)

      〔いきなり屋内を映す〕

      海岸から間宮宅C・S(02:39)

      北鎌倉駅付近から間宮宅C・S(09:52)

      歌舞伎座から料亭「田むら」C・S(24:49)

      料亭「田むら」から歌舞伎座C・S(31:43)

      歌舞伎座C・Sから間宮宅(31:53)

      間宮宅から喫茶店(40:23)

      喫茶店から間宮宅C・S(43:11)

      西脇医院から間宮宅(51:45)

      電話、病院の研究室から間宮宅(59:58)

      海岸から間宮宅C・S(1:12:24)

      矢部宅から西脇医院(1:14:23)

      矢部宅から紀子の仕事場(1:19:32)

      喫茶店から矢部宅(1:23:58)

      矢部宅から間宮宅(1:30:18)

      紀子の仕事場から間宮宅C・S(1:37:21)

      間宮宅付近から料亭「田むら」(1:40:59)

      料亭「田むら」から間宮宅C・S(1:46:45)

      紀子の仕事場付近から間宮宅(1:55:50)*

      ―――――――――――――――

      〔建物の外観やその付近を映す〕

      紀子の仕事場(11:03)

      小料理屋「多喜川」(14:28)

      間宮宅(17:23)

      歌舞伎座(24:01)

      病院の研究室(34:44)

      間宮宅(36:46)

      継続、間宮宅(47:01)

      西脇医院(50:43)

      病院の研究室(59:18)

      継続、間宮宅(1:04:31)

      矢部宅(1:13:34)

      矢部宅(1:17:00)

      喫茶店(1:22:08)

      継続、矢部宅(1:28:44)

      紀子の仕事場(1:35:14)

      紀子の仕事場(1:54:02)

      継続、間宮宅(2:01:29)

     

    ぁ屬茶漬の味」13/10(130) 5/18(28) 33(41)

      〔いきなり屋内を映す〕

      アヤの店から佐竹の職場C・S(08:27)

      バー「エコー」から佐竹宅C・S(12:02)

      旅館から佐竹宅(23:46)

      球場から佐竹宅C・S(32:18)

      佐竹宅から佐竹の職場(35:37)

      歌舞伎座から佐竹宅(50:27)

      ラーメン屋前から佐竹宅(1:03:02)*

      佐竹宅からアヤの店C・S(1:08:38)

      アヤの店から佐竹宅(1:12:04)

      佐竹宅から展望車C・S(1:20:59)

      展望車C・Sから佐竹の職場(1:22:33)

      佐竹の職場から佐竹宅C・S(1:24:27)

      飛行場から佐竹宅(1:30:58)

      ―――――――――――――――

      〔建物の外観やその付近を映す〕

      アヤの店(03:44)

      バー「エコー」(08:58)

      旅館(19:20)

      旅館(25:50)

      パチンコ屋(38:51)

      山内宅(45:58)

      歌舞伎座(48:21)

      パチンコ屋(57:54)

      ラーメン屋(1:00:38)

      継続、佐竹宅(1:49:48)

     

    ァ崚豕物語」9/29(31) 2/36(6) 38(40)

      〔いきなり屋内を映す〕

      うらら美容院から長男宅(23:18)

      長男宅からうらら美容院C・S(31:00)

      電話、うらら美容院から紀子の職場(36:30)

      紀子のアパートからうらら美容院(45:13)

      紀子のアパートからうらら美容院C・S(1:17:31)

      電話、長男宅から紀子の職場(1:35:41)

      紀子の勤務先の屋外付近から長男宅(1:37:27)*

      お寺の墓地から料理屋C・S(1:56:21)*

      料理屋C・Sから平山家C・S(2:02:13)

      ―――――――――――――――

      〔建物の外観やその付近を映す〕

      平山家(03:13)

      継続、平山家(04:36)

      長男宅(06:37)

      うらら美容院(22:12)

      継続、長男宅(30:48)

      紀子のアパートの隣人(39:35)

      紀子のアパート(40:15)

      紀子のアパートの隣人(40:51)

      紀子のアパート(41:16)

      熱海の旅館(47:56)

      継続、熱海の旅館(53:54)

      継続、熱海の旅館(55:42)

      うらら美容院(55:58)

      服部宅(1:02:47)

      小料理屋(1:05:12)

      おでん屋「お加代」(1:07:42)

      紀子のアパート(1:13:16)

      紀子のアパート(1:22:12)

      大阪城付近の駅構内事務所(1:28:25)

      敬三の下宿(1:29:50)

      長男宅(1:32:10)

      平山家(1:39:55)

      継続、平山家(1:41:21)

      継続、平山家(1:42:39)

      継続、平山家(1:48:16)

      継続、平山家(1:53:03)

      お寺の本堂(1:53:38)

      小学校校内(2:11:58)

      平山家(2:13:44)

     

    Α崛畚奸10/31(32) 3/38(8) 41

      〔いきなり屋内を映す〕

      土手から杉山宅(03:17)

      河合宅から杉山自宅の部屋C・S(19:24)

      ミルク・スタンドから千代の勤める会社C・S(54:45)

      戦友の会から杉村宅C・S(1:02:06)

      電話、ミルク・スタンドから杉山の職場(1:19:51)

      田辺のアパートから同僚三浦宅(1:30:03)

      三浦宅から杉山宅C・S(1:34:41)

      土手から杉山宅C・S(1:39:53)

      富永栄のアパートから杉山宅C・S(1:57:23)

      杉山宅から「ブルー・マウンテン」(2:08:03)

      ―――――――――――――――

      〔建物の外観やその付近を映す〕

      杉山の職場(08:42)

      杉山の職場(12:24)

      「ブルー・マウンテン」(15:11)

      おでん屋「喜多川」(25:27)

      千代の職場(28:49)

      ラーメン屋(29:43)

      杉山宅(31:10)

      田辺のアパート(35:41)

      継続、田辺のアパート(37:46)

      杉山の職場(39:51)

      お好み焼屋(41:41)

      旅館(45:27)

      杉山宅(48:36)

      ミルク・スタンド(53:21)

      杉山宅(56:00)

      田村宅(58:16)

      戦友の会(58:58)

      杉山宅(1:09:48)

      青木宅(1:13:41)

      おでん屋「喜多川」(1:15:26)

      ミルク・スタンド(1:18:15)

      田辺のアパート(1:23:20)

      継続、杉山宅(1:35:03)

      杉山宅(1:45:18)

      千代の職場(1:47:24)

      三浦宅(1:49:37)

      富永栄のアパート(1:53:41)

      おでん屋「喜多川」(2:03:43)

      田辺のアパート(2:13:49)

      三石工場事務所(2:18:35)

      下宿(2:19:55)

     

    А崚豕暮色」6/28(21) 2/32(6) 34(35)

      〔いきなり屋内を映す〕

      相生荘前から沼田宅C・S(22:28)*

      沼田宅C・Sから杉山宅(25:56)

      深夜喫茶「エトアール」C・Sから警察署C・S(53:59)

      笠原医院から杉山宅(1:19:08)

      杉山宅から銀行C・S(1:24:32)

      銀行からパチンコ屋(1:26:11)

      ―――――――――――――――

      〔建物の外観やその付近を映す〕

      小料理屋「小松」(02:53)

      杉山宅(07:49)

      銀行(12:48)

      うなぎ屋(15:06)

      富田のアパート(19:23)

      麻雀荘(31:33)

      杉山宅(37:43)

      珍々軒(42:09)

      バー「ガーベラ」(43:39)

      深夜喫茶「エトアール」(50:04)

      杉山宅(59:00)

      継続、杉山宅(1:06:00)

      麻雀荘(1:10:49)

      笠原医院(1:15:33)

      麻雀荘(1:29:03)

      杉山宅(1:34:28)

      麻雀荘(1:39:57)

      おでん屋「お多福」(1:41:31)

      バー「ガーベラ」(1:46:39)

      珍々軒(1:48:51)

      病院(1:54:00)

      麻雀荘(2:00:38)

      おでん屋「お多福」(2:02:21)

      杉山宅(2:06:26)

      継続、杉山宅(2:08:05)

      継続、杉山宅(2:08:24)

      杉山宅(2:12:48)

      継続、杉山宅(2:17:45)

     

    ─嵌犂濂屐廝掘18(39) 1/24(4) 25(31)

      〔いきなり屋内を映す〕

      うまいもの屋「若松」から平山宅C・S(10:42)

      箱根から平山の会社C・S(40:47)

      平山の会社から平山宅C・S(44:23)

      平山宅から平山の会社(55:13)

      中華料理屋「珍々軒」から平山宅C・S(1:06:08)

      築地の宿から平山宅C・S(1:19:06)

      電話、旅館「佐々木」から平山宅(1:54:01)

      ―――――――――――――――

      〔建物の外観やその付近を映す〕

      ステーション・ホテル(03:51)

      うまいもの屋「若松」(07:52)

      平山の会社(15:31)

      平山宅(23:06)

      聖ロカ病院(28:12)

      築地の宿(29:34)

      平山宅(31:55)

      谷口のアパート(47:11)

      平山宅(49:42)

      バー「ルナ」(58:15)

      中華料理屋「珍々軒」(1:02:41)

      バー「ルナ」(1:09:08)

      平山の会社(1:12:27)

      築地の宿(1:13:57)

      クラブ・ハウス(1:26:35)

      平山宅(1:29:32)

      蒲郡の旅館(1:37:46)

      旅館「佐々木」(1:45:41)

     

    「秋日和」15/21(71) 4/32(13) 36(41)

      〔いきなり屋内を映す〕

      寺の庫裡C・Sから築地の料亭C・S(09:02)

      築地の料亭から田口宅(17:16)

      うなぎ屋「竹川」C・Sから間宮宅(28:00)

      電話、桑田服飾学院からアヤ子の勤め先(37:52)

      アヤ子の勤め先C・Sから間宮の会社(38:54)

      クラブ・ハウスから平山宅(1:02:53)

      平山宅から間宮の会社C・S(1:06:57)

      バー「ルナ」から間宮宅(1:15:12)

      三輪のアパートからアヤ子の勤め先(1:31:06)

      アヤ子の勤め先屋上からラーメン屋C・S(1:32:56)*

      三輪のアパート廊下から間宮の会社C・S(1:39:35)*

      間宮の会社から「芳ずし」C・S(1:45:35)

      榛名湖畔C・Sから結婚披露宴会場C・S(2:00:14)

      結婚披露宴会場から築地の料亭C・S(2:01:45)

      築地の料亭から三輪のアパートC・S(2:04:41)

      ―――――――――――――――

      〔建物の外観やその付近を映す〕

      寺の庫裡(02:48)

      間宮の会社(22:32)

      うなぎ屋「竹川」(24:56)

      三輪のアパート(30:58)

      桑田服飾学院(34:35)

      とんかつ屋「さつき」(41:44)

      三輪のアパート(44:22)

      山小屋(48:34)

      アヤ子の勤め先(50:38)

      ゴルフ用品店(53:24)

      喫茶店(54:11)

      クラブ・ハウス(59:44)

      バー「ルナ」(1:11:02)

      うなぎ屋「竹川」(1:18:09)

      三輪のアパート(1:21:50)

      「芳ずし」(1:24:32)

      三輪のアパート(1:29:06)

      三輪のアパート(1:34:57)

      アヤ子の勤め先(1:49:51)

      伊香保旅館「俵屋」(1:51:29)

      榛名湖畔(1:58:26)

     

    「小早川家の秋」10/14(71) 3/21(14) 24(34)
                            [6/14(43) 1/19(5)  20(28)]

      〔いきなり屋内を映す〕

      電話、小早川家の事務所から小早川家(12:24)

      紀子の勤め先からフルーツパーラーC・S(16:12)

      旅館「佐々木」C・Sから小早川家の事務所C・S(33:41)

      小早川家の事務所から小早川家(35:17)

      小早川家から旅館「佐々木」(42:42)

      嵐山の保津川から小早川家(55:27)*

      小早川家C・Sから小早川家の事務所C・S(1:01:17)

      小早川家の事務所から小早川家(1:02:17)

      バー「リラ」から小早川家C・S(1:22:04)

      小早川家から旅館「佐々木」C・S(1:24:04)

      ―――――――――――――――

      〔建物の外観やその付近を映す〕

      バー「リラ」(02:29)

      秋子のアパート(08:35)

      小早川家の事務所(11:33)

      紀子の勤め先(15:08)

      小早川家の事務所(19:52)

      氷屋(23:48)

      旅館「佐々木」(26:25)

      画廊「千草」(46:51)

      嵐山の料亭(49:22)

      継続、小早川家(1:00:43)

      継続、小早川家(1:06:23)

      バー「リラ」(1:19:45)

      火葬場の待合室(1:31:42)

      継続、火葬場の待合室(1:34:49)

     

    「秋刀魚の味」8/19(42) 2/25(8) 27(34)

      〔いきなり屋内を映す〕

      球場から小料理屋「若松」C・S(06:26)

      小料理屋「若松」から平山宅(13:13)

      バー「かおる」前から平山宅(44:40)*

      石川台駅から平山の職場C・S(1:01:46)

      小料理屋「若松」から平山宅(1:09:25)

      とんかつ屋から平山宅C・S(1:26:05)

      平山宅C・Sから河合宅C・S(1:39:53)

      バー「かおる」前から平山宅C・S(1:46:40)*

      ―――――――――――――――

      〔建物の外観やその付近を映す〕

      平山の職場(01:59)

      幸一のアパート(15:41)

      路子の勤め先(18:21)

      小料理屋「立花」(20:13)

      「燕来軒」(27:03)

      小料理屋「若松」(30:35)

      「燕来軒」(34:44)

      バー「かおる」(40:00)

      幸一のアパートの隣(47:51)

      幸一のアパート(48:34)

      幸一のアパート(53:53)

      継続、幸一のアパート(56:47)

      小料理屋「若松」(1:05:23)

      幸一のアパート(1:15:53)

      バー「かおる」(1:19:12)

      とんかつ屋(1:22:18)

      河合宅(1:31:11)

      平山宅(1:35:42)

      バー「かおる」(1:44:10)

     

     

    「麦秋」は「お茶漬の味」ほどには、いきなりの移動が目立ちませんが、それは変種である *付きや電話からの移動、C・Sが十二件と多いためでしょう。「お茶漬の味」は屋内への移動が二十三件と最も少ないですが、%は逆に最も高いので目立ちます。「東京物語」になると、それまでの作品とくらべて屋内への移動が三十八件で最多、%は最低となります。

     

    続く「早春」は数値の上では殆ど変わらないのですが、「東京物語」と作風はずいぶん異なっています。それを示す例として連続する2つの屋内に入る間隔の差を見てみます。プラスなら短い場面から長い場面に緩くなり、マイナスは逆に速くなるわけです。それぞれの作品の最長と最短から5件ずつ抽出します。「東京物語」のいちばん緩いものは以下の(継続、平山家)から(長男宅)の 13:34 です。

     

     場面「継続、平山家」の長さ 02:01 = 0:06:37(長男宅) - 0:04:36(継続、平山家)

     場面「長男宅」の長さ    15:35 = 0:22:12(うらら美容院)- 0:06:37(長男宅)

     緩急(緩い)        13:34 = 15:35(場面「長男宅」)- 02:01(場面「継続、平山家」)

     

     

     「東京物語」「早春」屋内場面の緩急

     

    「東京物語」 「早春」
    緩急  長さ  位置   場面 緩急  長さ  位置   場面
    02:01 0:04:36 継続、平山家 03:08 0:58:58 戦友の会
    13:34 15:35 0:06:37 長男宅 4:34 07:42 1:02:06 戦友の会から杉村宅C・S
    0:22:12 うらら美容院 1:09:48 杉山宅
    00:16 0:55:42 継続、熱海の旅館 00:22 1:34:41 三浦宅から杉山宅C・S
    6:33 06:49 0:55:58 うらら美容院 4:28 04:50 1:35:03 継続、杉山宅
    1:02:47 服部宅 1:39:53 土手から杉山宅C・S
    01:06 0:22:12 うらら美容院 03:29 1:19:51 電話、ミルク・スタンドから杉山の職場
    6:24 07:30 0:23:18 うらら美容院から長男宅 3:14 06:43 1:23:20 田辺のアパート
    0:30:48 継続、長男宅 1:30:03 田辺のアパートから同僚三浦宅
    00:12 0:30:48 継続、長男宅 01:27 0:29:43 ラーメン屋
    5:18 05:30 0:31:00 長男宅からうらら美容院C・S 3:04 04:31 0:31:10 杉山宅
    0:36:30 電話、うらら美容院から紀子の職場 0:35:41 田辺のアパート
    01:18 1:41:21 継続、平山家 03:42 1:53:41 富永栄のアパート
    4:19 05:37 1:42:39 継続、平山家 2:38 06:20 1:57:23 富永栄のアパートから杉山宅C・S
    1:48:16 継続、平山家 2:03:43 おでん屋「喜多川」
    15:35 0:06:37 長男宅 04:38 1:30:03 田辺のアパートから同僚三浦宅
    -14:29 01:06 0:22:12 うらら美容院 -4:16 00:22 1:34:41 三浦宅から杉山宅C・S
    0:23:18 うらら美容院から長男宅 1:35:03 継続、杉山宅
    09:45 2:02:13 料理屋C・Sから平山家C・S 07:42 1:02:06 戦友の会から杉村宅C・S
    -7:59 01:46 2:11:58 小学校校内 -3:49 03:53 1:09:48 杉山宅
    2:13:44 平山家 1:13:41 青木宅
    07:30 0:23:18 うらら美容院から長男宅 04:46 2:13:49 田辺のアパート
    -7:18 00:12 0:30:48 継続、長男宅 -3:26 01:20 2:18:35 三石工場事務所
    0:31:00 長男宅からうらら美容院C・S 2:19:55 下宿
    06:13 1:22:12 紀子のアパート 04:45 0:48:36 杉山宅
    -4:48 01:25 1:28:25 大阪城付近の駅構内事務所 -3:21 01:24 0:53:21 ミルク・スタンド
    1:29:50 敬三の下宿 0:54:45 ミルク・スタンドから千代の勤める会社C・S
    06:49 0:55:58 うらら美容院 05:25 1:39:53 土手から杉山宅C・S
    -4:24 02:25 1:02:47 服部宅 -3:19 02:06 1:45:18 杉山宅
    1:05:12 小料理屋 1:47:24 千代の職場

     

     

    「東京物語」は最長が 13:34、最短が -14:29「早春」ではそれぞれ 4:34、-4:16 です。さらに最長、最短の差は「東京物語」28:03 (13:34 - (-14:29))、「早春」8:50 (4:34 - (-4:16)) と 20分近くの違いがあります。後に書く「変な『早春』」では、「早春」がだらだら感のあることを示しますが、そこでは挙げない、場面転換の間隔の差が少ないことも関係しているようです。「東京物語」は反対の傾向があると言えるでしょう。なかには、屋外の場面が間にあるかも知れませんが、二作品の違いははっきり出ていると思われます。

     

    話題を屋内への入り方に戻します。「秋日和」と「小早川家の秋」の%はその他のカラー作品よりも高く、白黒の「晩春」「宗方姉妹」に近いですが、「小早川家の秋」の方は小早川家と、その事務所間の移動四件を除いたものは([……]内)、他のカラー作品に近くなります。


    三種の変種を除くと%は「晩春」(32)が「麦秋」(25)、「お茶漬の味」(28)を抜いて最高になりますが、これはC・Sが四件であり、他の二作の九件、七件の半数ほどしかないためです。屋内に入る回数は映写時間を「早春」に合わせると、最も少ない「お茶漬の味」(29)[「小早川家の秋」(28)]から最多の「早春」(41)まで余り差が無くなりますが、製作順にみると四十前後から三十前後へと、減少する傾向にあります。


    こには挙げませんでしたが、他の作品に現れないものとして、「早春」「東京暮色」には初めてであっても、いきなり屋内を映すものが一つずつあります。それらは杉山が見舞う同僚三浦(増田順二)宅内(1:30:03)と、父周吉が訪れる長女の夫沼田宅C・S(22:28)で、三浦宅は後に玄関で葬儀の花輪が画面いっぱいに映るショットがあります(1:49:37)。この二作品は外観を省略することにより、物語への関わりの弱さや不透明な性格など、彼らの特異性を象徴していると思われます。


    電話により移動先が映された場合のほとんどが、その会話のなかで何度か行き来しても、最後は移動先で終りますが、移動元で終るものが「東京物語」長男宅からうらら美容院(1:33:12)、「小早川家の秋」小早川家から平山医院(57:40)の二つあります。これらは移動とはみなしませんが、どちらも主要人物の危篤による場面の緊迫感を出すためのものです。前者はうらら美容院で志げが母危篤の電報を受け取るところから順に追っていったとすると緩慢になってしまいます。後者は呼び出し音が院内に鳴り響くだけで、その後は省略されて次の場面では既に医者が往診に来ています。ただし、こちらはその音が長く続くので、医者が現われないのではないかと要らぬ心配をしてしまいます。

     

    【参考文献】

     

     (本文ここまで)