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    ◆小津の文法(3)−サスペンス

    • 2018.03.07 Wednesday
    • 05:09

     

    JUGEMテーマ:日本映画の監督

     

     

    サスペンス 【参考文献】



       津の編集助手であった浦岡敬一によると、「右から左に動くものはサスペンスを表す」と監督から教わったとのこと(㉘第三集 インタビュー集)。彼は小津映画によく出てくる振り子時計を例にして、このことを説明しています。調べてみると確かに時計の振り子が右から振れると事件が起きて、収まると左から振れるようになります。それは前者だけの場合もあり、途中で振り子が何度か映される時は適当に左右に変りますが、最後は左からとなります。


    サイレント「東京の女」の春江(田中絹代)が、恋人良一(江川宇礼雄)の自殺の知らせを電話で受ける場面では、地震の揺れによって時計屋の止めてある時計の振り子が一斉に動き出します(㉗第四集 29+5+13+6+1=54)。振り子の周期に違いがあるので全てが同じ動きにはなりませんが、目立つ処にある上の四つを含めて大よそ右から振れています(38:19)。次に店の時計が映るショットでも同じように右から振れて、さらに時計屋の前後のショットでは、姉ちか子(岡田嘉子)のいる家に掛けられている時計も右から振れます(38:13, 39:12)。


       の作品のように多くの小道具と、四つものショットを使ってサスペンスを示すものは他に例がありません。小津映画唯一の自殺(「東京暮色」での妹の死因を事故とみなせば)を強調していますが、ストーリーと直接関係のない地震を絡めてもいて、過剰な演出といえます(地震は揺れを利用しただけで、それによる被害などは扱っていない)。


    「長屋紳士録」では親にはぐれた子供がかあやん(飯田蝶子)の家を飛び出した後、そこの時計が左から振れているので例外です(47:19)。この後、彼女が子供を探しに出るので型としては後述の「お早よう」に近いのですが、時計が映るのはこの一回だけなので、可哀そうなあの子は、また戻って来ると先に予告しているのでしょう。


       下にトーキーに限ってですが、その他の時計によるサスペンスを表している例を七つ挙げます。「風の中の牝鷄」は物語の発端で左から振れて、早々にサスペンスを閉じてしまいます。また「東京暮色」でも後に左から振れてしまうので、結末に相応しくありません。まるで明子を厄介払いしたとでも言っているようです。作者の慣れないテーマに対する迷いのようなものが感じられて、これらの作品の評価が低い一因がここにもあるようです。

     

     

       
    1. 「戸田家の兄妹」主が倒れた後の時計の振り子が右から振れている(14:57)
    2. 「風の中の牝鷄」浩が入院した病院の時計が右から振れて(13:30)、朝になると彼は回復して左から振れる(17:06)
    3. 「晩春」紀子(原節子)が父(笠智衆)と喧嘩をして友人アヤ(月丘夢路)宅へ行くと、そこの時計が右から振れる(1:00:16)
    4. 「東京暮色」明子(有馬稲子)が入院した病院の時計が、初めは右から振れる(1:59:29)
    5. 「お早よう」二人の子供が家を飛び出した晩の時計が右から振れる(1:22:42)。そしてそのすぐ後だが、子供たちが無事に帰宅する前には左から振れる(1:23:01)
    6. 「浮草」清(川口浩)と加代(若尾文子)が外泊した夜の清の自宅にある時計が右から振れる(1:38:02)。リメイク前の「浮草物語」も同じ(1:01:14)
    7. 「小早川家の秋」万兵衛(中村鴈治郎)が倒れた直後の平山医院の時計も右から(58:11)
       



       のように、小津が振り子時計をたびたび使用したのは、そこに過ぎ去った時間と現在とが端的に表されて、サスペンス性を盛り込むための格好の道具になったからでしょう。しかし、これから起る事態を予測して、その時刻を待ち受けるような逆の展開では振り子時計は映されません。小津映画に、たとえば犯行予告のようなサスペンス性のあるものが、そのような場面には無いからです。以下にそれらを。

     

     

       
    1. 「東京物語」尾道を去る紀子(原節子)が乗る汽車の通過を、教室で待ち受ける京子(香川京子)は自分の腕時計を二回見る(2:12:18)
    2. 「東京暮色」母喜久子(山田五十鈴)が東京を立つ場面では、上の娘孝子(原節子)が見送りに来るのを待っているが、ここではホームの時計が映り(2:08:51)、孝子のいる自宅の時計は映らない
    3. 「秋日和」アヤ子(司葉子)と百合子(岡田茉莉子)は職場で自分の腕時計を見て、友人の新婚夫婦を乗せた電車が通過する時刻を確認する(50:50)
       

     

    【参考文献】

     

     (本文ここまで)




     

     

     

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