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    ◆普遍性(1)−面白い風景

    • 2018.03.09 Friday
    • 05:05

     

    JUGEMテーマ:日本映画の監督

     

     

    面白い風景 【参考文献】



    「秋刀魚の味」の風景

       津映画には主に電車、古いものでは蒸気機関車や路面電車、クラシック・カーなど、乗り物が印象に残るショットとしてたびたび登場します。そうでない作品を挙げるのが難しいほどです。例えば遺作といわれる「秋刀魚の味」(この「秋刀魚の味」が小津安二郎の遺作、という表現は間違い。小津はこの作品の後、テレビ・ドラマ「青春放課後」の脚本を書き上げており、さらに「大根と人参」の脚本を執筆中だったので、これが遺作)では道路を横切って電車が通過します(図1 53:16)。一見すると他愛ないショットのようですが、実はとっても面白い。ここは走り去る電車を主役にしているのです。

     

    面白い風景 1
     図1

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     


    線路の奥に見えるアパートは、おそらく長男夫婦の平山幸一(佐田啓二)と秋子(岡田茉莉子)の棲家。そしてヒロインである幸一の妹、路子(岩下志麻)の乗って来た電車が今その前を通過して、彼女は手前か次の駅で降りて長男夫婦のアパートへ向っているはずです。何故なら、帰りには電車の通らない同じ踏切り(1:00:39)が映った後、路子がその後を追うことにより、さきに兄夫婦のアパートを出ようとした三浦(吉田輝雄)と二人で、駅のホームに立っているからです(図2 1:00:45)。駅の名前は石川台、東急池上線の中間付近です。説明が少ないので推理小説並のドキドキ感が漂います。

     

    面白い風景 2
     図2

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     


      こまでを良く見直してみましょう。初めに電車が走ったときは画面の左奥から右手前に、ほとんど水平に陽が射しており、影の短いことから時刻は正午ごろ。池上線ならこの電車は北に向っている上り方面ということになります(図3− 々丸は駅、太い矢印は電車の走る方向、細い矢印は影の向きと長さを表し、方角は北が上)。したがって、これは路子と三浦が帰る時に乗る電車と同じ方向です。しかも北に進むのは石川台下り方面の隣駅、雪が谷大塚の先(ここから南に大きく曲がる)しかないので、二人が電車に乗る駅より一つ以上も離れていることになります。奥に映るアパートも長男夫婦の住む処とは違うようです。周りに他の建物はなく一棟だけ見えますが、その後、秋子がベランダで毛布を干す場面では、すぐ向こうに小津映画にはよくある他の住居の壁が見えているので、ここは日当りが悪いでしょう(53:53)。

     

    面白い風景 3
     図3

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     


    そして、このアパートに入る前のショットにあった、ベランダ側をほぼ正面から映す建物も外観を表しているはずですが、その構造や干されている物は初めのものと異ります。さらに離れて撮られているので、ここにも隣接した住居がないことが分ります(53:28)。つまり、これら三つのアパートは別物なのです。なおかつ、行きに電車が走る踏切りのショットと帰りの電車の走らないそれは、あちこちに写る影の形や、アパートのベランダにある洗濯物の干され方などが区別できないので、ほとんど同じ時刻のようです。


    しかし、そこは小津映画。見た目が似ているのなら、それ以上詮索してはいけません。電車も行きは線路を左から右、帰る時はホームに入って来た電車は逆方向の右から左です。おっと、右から左に動いたらサスペンス。ここは見落としてはならない。路子と三浦がこの電車に乗り込むのは、後に彼女が三浦に失恋することの前兆だったのです。


       れにしても何故、電車が通過した踏切りから遠く離れた石川台のホームを選んだのでしょうか。景色に問題があったのかも知れませんが、ここは陽射しに注目してみます。かりに踏切り近くの雪が谷大塚駅で撮ったとすると、正午頃の陽は電車の後方から射して、ホームでは人物に向って左側からになります(図3−◆法そしてこの場面では人物を左右から撮るので、右からの時に逆光となってしまいます。


    実際の石川台駅の上り電車は、西から東に走って陽は南側、線路に向って少し右寄りですが、ほぼ正面から射しています(図3−)。このため人物にも正面から陽が当るので、左右どちらから撮っても綺麗に映ります。入って来た電車は逆光になりますが、この時はホームの外、斜め前方からかなり引いて撮ることにより、それを防いでいます。しかし駅全体が日陰になってしまうので綺麗な映像ではないのですが、これもサスペンスを現しているのかも知れません。初めてこのショットを観た時、遠く離れて日陰となった光景は事件の前触れのように感じました。

     

    なお洗足池はさらに東西に向きますが、ここを選ばなかったのは景色の問題か、あるいは近い石川台でも日の具合は間にあったからでしょうか。「早春」の蒲田駅の場合は陽の射す側から撮るので綺麗ですが、電車か入って来ると人物がその陰に隠れてしまい(08:02)、これは何とも間抜けな映像に思えます。ホーム一つ撮るのも中々難しい。

     


    「麦秋」の風景

       は「麦秋」はどうか。北鎌倉駅のホームで紀子(原節子)が動き廻る割りには彼女や矢部(二本柳寛)、そして電車も綺麗に撮れていました。それもそのはずで、この場面は影の向きが二種類あるのです。ショットは全部で四つあって、二つずつ右から陽が射すショット一、三と後方からのショット二、四(図4 ショットは二が図5、三が図6)。

     

     
    面白い風景 4
     図4
    面白い風景 5 面白い風景 6
     図5  図6

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    ショット一はホームに対してやや後方、ショット二(図5)はふたりの影が線路に向ってほとんど垂直に伸びています。ショット三(図6)と四ではその足元は映りませんが、三はふたりの身体全体への陽の当り具合と肩に落ちる頭部の影で、それはホームに対して平行もしくはやや前方と分ります。四の方は紀子が先に電車に近づいて、矢部の影が彼女の背中に掛かるので線路に向って右前方。どちらもショット一、二の少し後のようです。


       鎌倉駅付近の上り電車は北西に走ります。このため上り方面では線路に向って人は北東を向きます。ショット一、三は短い影が東の方から落ちるので正午前、ショット二、四は長い影が西から伸びるので夕刻前です。この後、山中を電車がほぼ水平に走るショットでは、それが北鎌倉駅を出た直後だとすると、画面奥は人が線路に向かうのと同じ北東になり(09:24)、陽が正面に当っているので午後の時間帯でしょう。

     

    しかし見た目は電車が右から左に走り、ホームに入って来る電車も右からだったので、どちらもサスペンス方向です。左からの電車を撮るには「早春」のように反対側からやるしかありません。それでは人物も「早春」と同じように電車の陰に隠れてしまい、だいいち日の射す向きが逆です。ここは「秋刀魚の味」の場合とは違い、綺麗さを優先してホームを撮り、それに合わせて走り去る電車も同じ方向にしたのでしょう。次に「麦秋」ホームでの四ショットの影の長さと向き、その時刻を示します。

     

     

       
    1. 紀子が一人でホームに立っている(08:40)。影は短く、線路に向って右奥から左手前(東南東:正午前)

    2. 紀子が矢部を見つけて歩み寄る(08:50)。影は長く、線路に向って真後ろから前(南西:夕刻前)

    3. 紀子と矢部がホーム後方に並んで立つ(09:02)。1の少し後

    4. ホームに入ってきた電車に乗り込む(09:18)。2の少し後

       

     

     

       ョット二で矢部に歩み寄った紀子が彼に挨拶をする時、彼女のちょうど正面に柱の影が掛かり顔の真ん中を黒く汚してしまうので、ここは演出の失敗といえます。それとも、まともに当てると陽が強過ぎたのでしょうか。ショット二(図5)から三(図6)に移ると、背後にあった柱が消えるので場所を変えていることが分ります。これは構図の問題だと思われますが、二人の会話には柱が邪魔だったのかも知れません。

     

    ところが、ここで画面左奥に帽子を被り、鞄を前に下げた男が忽然と現れ、続くショット四では再び柱が映って、男は二人と同じ車両に乗り込んでゆきます。真面目に観るとミステリーですが、これは以下の理由によると思われます。前のショット二の図5では省略してありますが、実際には左手前にも女が立っていて、そこで現れた男の矢部を強く示しています。続くこのショット三では紀子がアップになるので、その左に男を立たせたのでしょう。最後のショット四では左からもう一人女が現れて、女男女男と並ぶことにより間の矢部と紀子を両脇で支えます。「◆構図至上主義(1)−「晩春」の通勤電車」最後の図4も、実際には左奥にもう一人サラリーマンが座っており、全体は「」と交互に並んでいました。

     

    紀子はショット一で、彼女が薦めたらしい本を読んでいる矢部を見つけて自分の方から近づき、ショット四では電車が来ると先に動き出します。どうやら彼女は夫を掌に乗せてしまいそうな気性のようです。

     

    【参考文献】

     

     (本文ここまで)




     

     

     

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