◆小津の演出(6)−感銘の深まる映写時間

  • 2018.04.04 Wednesday
  • 05:05

 

JUGEMテーマ:日本映画の監督

 

 

感銘の深まる映写時間 【参考文献】

 

 

 

「映画の場合、あまり短くても感銘の深いものは出来ないようです。今までのいい映画の統計をとって見ますと、映写時間にして一時間三十分から四十五分位、長さにして九千四五百といったところが一番多いようです。短いものだとそれ相当の感銘といったところで、さ程深いものじゃなさそうです。見ていて何といいますか、肉体的の疲労感が伴わないと本当の感銘じゃないような気がするのです」(映画と文学◆

 

 上はある座談会での小津の発言であり、映写時間 90分から 105分の映画が深い感銘を与えるということですが、この年に彼の製作した「長屋紳士録」は、戦後間もないことも影響して映写時間は 71分と短い。今では二時間以上が当たり前となり、小津のいう「肉体的の疲労感」を通り越してかなり退屈するものが多いのは、説明のためにある映像や台詞が長くなったからでしょう。「東京物語」などは決して退屈はしませんが、それは観せるため聴かせるための映像や台詞で作品が満たされているからです。

 

 このように作風によって感じ方も変ってきますが、映写時間 90分以上というのは今の感覚からすると短く、「さ程深くない感銘」になるでしょう。小津の作品でもカラー最短の「お早よう」がこれに当てはまり、二時間を超えるものが目立つようになります。また範囲が 15分というのも狭いので 25分に広げて 105分から 130分くらいが妥当ではないでしょうか。

 

 に小津のトーキー 19本の映写時間を示します(*は小津指摘の 90分から 105分、+が 105分から 130分の映写時間のものを表す)。

 

 

 トーキーの映写時間:

 

   
  1. 「一人息子」………………83分
  2. 「淑女は何を忘れたか」…71分
  3. 「戸田家の兄妹」………105分*+
  4. 「父ありき」………………87分
  5. 「長屋紳士録」……………71分
  6. 「風の中の牝鷄」…………84分
  7. 「晩春」…………………108分+
  8. 「宗方姉妹」……………112分+
  9. 「麦秋」…………………125分+
  10. 「お茶漬の味」…………116分+
  11. 「東京物語」……………136分
  12. 「早春」…………………144分
  13. 「東京暮色」……………140分
  14. 「彼岸花」………………118分+
  15. 「お早よう」………………94分*
  16. 「浮草」…………………119分+
  17. 「秋日和」………………128分+
  18. 「小早川家の秋」………103分*
  19. 「秋刀魚の味」…………113分+

 

 

「東京物語」とそれに続く「早春」「東京暮色」の三本は集中して他を抜いて長い作品ですが、小津は「東京物語」の成功で長さにも自信を持ち、それまでに馴染みのないテーマを扱う意欲作を撮っていったのではないでしょうか。しかし結果を出せなかったので、映写時間も再び二時間程度のものに収まったのだと思われます。

 

【参考文献】

 

 (本文ここまで)




 

 

 

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  • 2019.07.19 Friday
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