◆隠された演出(3)−読書

  • 2018.04.18 Wednesday
  • 12:18

 

JUGEMテーマ:日本映画の監督

 

 

読書 【参考文献】

 

 

 

 津の映画には読書の場面がよくありますが、そのほとんどが何を読んでいるのか分りません。はっきり題名が読めるのは「若き日」の「ドン・キホーテ」(1:16:28)。この学生は他愛ないということか。あるいは、主人公の山本(斎藤達雄)と副主人公の渡辺(詰城一郎)をドン・キホーテとサンチョ・パンサに見立てたのか(配役の順番は逆)。しかし山本と渡辺による恋の鞘当ては「ドン・キホーテ」の内容にそぐわないので、それはないでしょうか。

 

小津映画の書物といえば「大学は出たけれど」にある、就職できずに「毎日が日曜日」と夫が妻に洒落のめして打明ける、雑誌「サンデー毎日」(05:35)。「戸田家の兄妹」で和子(三宅邦子)の読んでいる雑誌は「婦人之友」のようですが(15:31)、その傾向から耶蘇教信者であることを表しているのかも知れません。彼女はこの時代には珍しかったろうと思われるピアノを嗜んでもいます。

 

題名が分るように少しの間その表紙をカメラに向けるのが、「父ありき」での同窓会から父親が帰った晩に、息子良平(佐野周二)が読む文庫本(1:13:07)と、「晩春」京都の宿泊先で父周吉(笠智衆)が帰り支度の最後に鞄へしまう、原書のニーチェ「ツァラトストラはかく語りき」(1:31:26)。「父ありき」の方は映像がぼやけて読めませんが、父との死別を表しているのでしょうか。「晩春」の「ツァラトストラ」は永劫回帰≒輪廻とすると「麦秋」に近いですが、すぐ後にある父の言葉「人間生活の歴史の順序」に相当するのか。

 

「麦秋」の通勤時には、駅のホームで紀子(原節子)から薦められたらしい、矢部(二本柳寛)の言葉「面白いですねえ『チボー家の人々』」(「◆普遍性(1)−面白い風景」図6 09:08)があります。これは主人公ジャックの兄が医者、友人の妹ジェンニーと恋愛関係にあり、両家のカトリックとプロテスタントという信仰の違いを乗り越えて成就するという、設定や筋書きをなぞっているようです。彼らの遺した子供に未来を託すという内容も、「麦秋」の子供達につながるでしょうか。

 

矢部が読み進んだのは四巻目の半分というのですが、小説のその辺りも今の二人と似たよな関係を表しています。同じ版と思われる '49年白水社発刊のもので確認したところ、若干表現に違いはありますが構成は現在のものと変わりなく、第四巻は「美しい季節 下」前半の八でジャックとジェンニーによるデートの場面があります。そこでヴェルレーヌ、マラルメ、ボードレール等が好きか、読んだかと小説の方は男が女に訊いています。矢部が読んでいる真ん中の十ではジェンニーがジャックとの仲を母親に打明け、聞いた方は唖然となります。

 

訳者の山内義雄は「麦秋」前年の '50年に、この作品により芸術院賞を受賞しているので話題作だったと思われます。であれば、紀子が読んで薦めた理由にもなるわけです。実際に小説の方を読んでから「麦秋」を観た人は、少し臭く感じたかも知れませんが、筋が似ている処なども、それなりに楽しめたのではないでしょうか。

 

「早春」の駅ホームで青木(高橋貞二)は新聞や読み物ではなく、「KELLOGG'S」の袋を胸に抱えていますが、間食用か(07:58)。杉山(池部良)が読んでいる新聞は判読が難しいですが、隣の田辺(須賀不二男)は雑誌「サンデー毎日」を持っているので(気分は「毎日が日曜日」?)、杉山の方は毎日新聞のはず。だいたいそのように読めます(07:50)。夜更けの杉山宅で、「戦友の会」に出ている、亭主の帰りを待つ昌子(淡島千景)が読んでいる本は(1:02:14)、なんと白っ紙! その他、書物に限らず判読できる印刷物を挙げます。

 

 

 
  1. 「若き日」雑誌「演劇改造」(03:14)/MOVING PICTURE WORLD」(44:04)/五円札、壱円札(46:18)/映像がぼやけて断定できない漢字二文字「?船」(1:20:34)/「アサヒ スポーツ」(1:39:12)
  2. 「朗らかに歩め」雑誌「少女の友」(1:10:55, 1:11:37)
  3. 「落第はしたけれど」官報(34:14)/壱円札四枚(55:19)/「アサヒ スポーツ」(1:01:34)
  4. 「その夜の妻」官報(02:58)/ぼやけて断定できない雑誌は「JOURNAL」(05:08)/NOTE・BOOK と雑誌「コドモノクニ」(22:09)
  5. 「淑女と髯」東京新聞(24:07)/「漱石全集」(34:06)/五円札、壱円札、拾円札(34:48)
  6. 「東京の合唱」絵本「ハナノウタ」(49:50)
  7. 「青春の夢いまいづこ」雑誌「VANITY FAIR」(39:44)
  8. 「東京の女」映画のプログラム「百万円貰ったら」「六月十三日の夜」と雑誌「婦女界」(34:50)。「百万円貰ったら」が劇中映画として映される(09:07)
  9. 「出来ごころ」軍人面子(32:42)
  10. 「淑女は何を忘れたか」本の包装紙「MARUZEN COMPANY」(14:05)
  11. 「風の中の牝鷄」読売新聞(04:11)/大相撲の解説集か(30:31)
  12. 「晩春」雑誌「中央公論」(12:01)
  13. 「宗方姉妹」「THE ATOMIC BOMB」の記事(06:26)
  14. 「お茶漬の味」鉄道の時刻表(07:49)/雑誌「改造」(1:04:38)
  15. 「東京物語」中学英語の教科書「NEW TSUDA READERS」(16:47)
  16. 「早春」雑誌「文芸春秋」(2:01:12)
  17. 「東京暮色」雑誌「サンケイ」(1:29:14)/「キューピッド絵本」(2:13:48)
  18. 「お早よう」東京新聞(16:14)
  19. 「秋日和」講談社ディズニー絵本「ピノキオ」(28:59)/東京新聞(30:50)/登山日誌「浅間???」手で隠されて後は読めないが、表紙は浅間山噴火の写真(49:53)
  20. 「小早川家の秋」判読は難しいが、舞台が京都なので朝日新聞か(1:22:23)
  21. 「秋刀魚の味」読売新聞(54:04)
 

 

【参考文献】

 

 (本文ここまで)




 

 

 

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