◆隠された演出(5)−姉妹作

  • 2018.04.22 Sunday
  • 09:24

 

JUGEMテーマ:日本映画の監督

 

 

姉妹作 【参考文献】

 

 

 

 イレント作品「出来ごころ」('33/09) の元の題名「長屋紳士録」は暗いということで改めさせられ、次の「母を恋はずや」('34/05) も、同様に「東京暮色」から変更させられました。そして反古となった題名は、どちらもトーキーになってから後の作品で流用されています。

 

 しかし実際の「長屋紳士録」('47) は、かあやん(飯田蝶子)が主人公なので適切とはいえず、「東京暮色」('57) の方は父親の心境を表すようですが、これも暮色は父親より母親、元の作品の方が意に合いそうです。その内容も娘が死ぬ悲劇的結末なので暮色ではないでしょう。

 

 これらの先の題名が暗いといわれたのは、二つとも漢字だけから成り、紳士録、暮色の言葉の印象からくる硬さ等にあったでしょうか。さらに、これらの前の二作「東京の女」('33/02) 「非常線の女」('33/04) につづく題名として「長屋紳士録」「東京暮色」では見劣りしたのかも知れません。

 

 日では「長屋紳士録」「出来ごころ」は似たり寄ったりの印象を受けます。「東京暮色」は今も昔とそれほど変りないと思われますが、変更後の「母を恋はずや」では全く今の時代には合いません。つまり変えた後の題名は、どちらもその時代にはぴったりでした。戦後になって「長屋紳士録」が認められたのは敗戦による影響で、「東京暮色」の方は、その後の「晩春」に始まる小津の評価の高まりによると言えるでしょうか。

 

 題名の良し悪しは別として、「出来ごころ」と「長屋紳士録」は同じ長屋ものでも全く異る作品といえます。強いて共通点と言えるのは、長屋に転がり込んだ身寄りのない者が、主人公に受け入れられながらも離れていくという処くらいでしょう。

 

 ーム・ドラマの二作「母を恋はずや」「東京暮色」もそれほど似ているわけではありませんが、よくみると非常に対照的な内容となっていることが分ります(以下のリスト参照― + は * からの帰結)。小津は「東京暮色」の脚本を書くに当り、「母を恋はずや」を下敷きにして、その反対をやろうと考えたのだと思われます。このため暮色という名の悲劇になってしまったのでしょう。とくに「妹は異父(と疑う)」はかなり不自然なので、無理やり当てはめた影響がもろに出てしまったようです。妹はものすごい形相で自分の本当の父親は誰なのかと母親に迫りますが、そんなことより母の失踪を責めるか、その原因を問い詰めるのが筋です(後に書く「◆アンチ小津(2)−悲しみのドラマ」参照)。

 

 

 「母を恋はずや」     「東京暮色」

 

  母親の悲哀を描く     父親の悲哀を描く

  家族構成―母兄弟     家族構成―父姉妹

  片親と死に別れ      片親と生き別れ

  兄は異母*         妹は異父(と疑う)+

  上の子がぐれる+     下の子がぐれる*

  問題収束         悲劇的結末

 

 

 津は他の作家から筋を拝借する場合も、性別や上下関係、依存関係等を入れ替える、同じようなカムフラージュをよく施しています(「◆小津と漱石(1)−個人主義と矛盾A 場面の拝借」「◆隠された演出(1)−劇中劇」「◆隠された演出(3)−読書」、後に書く「◆アンチ小津(1)−アンチ「東京物語」」参照)。

 

【参考文献】

 

 (本文ここまで)




 

 

 

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