◆隠された演出(6)−繰り返すネタ/贔屓

  • 2018.04.25 Wednesday
  • 10:37

 

JUGEMテーマ:日本映画の監督

 

 

繰り返すネタ/贔屓 【参考文献】

 

 

 

繰り返すネタ

 

 じ動作の繰り返しを複数人で主にシンクロしながら、小津映画にはよくある場面です。これとは別に似たような出来事が複数回起る場合があり、それらは後の出来事がわざとらしくならないように、または後の方を前の出来事が暗示するように仕組まれています。

 

   
  1. 「一人息子」親子で内緒ごと―息子が少年の頃は担任に中学へ進学すると言い(08:50)、成人してからは妻帯して子供もある。そして転職までしている(17:38, 20:02, 21:48)。母親は彼の教育費のために家や畑を売り払って工場の長屋暮らしをしている(54:42)
  2. 「父ありき」親子で川釣り(父親との別れにつながる)―前は父親が告げる(22:10)。後の方は竿を右から左に流すサスペンスであり、父との死別を暗示している(52:10)/息子が食後にごろ寝―これも父親との別れの前兆だが(26:50, 1:17:12)、やはり後は父の死につながる。息子は少年時代にこの行儀の悪さを窘められるが、成人しても改めない
  3. 「風の中の牝鷄」階段を落下物―前は空き缶(54:08)、後は妻(1:14:50)。どちらも夫の暴力による
  4. 「早春」夫が連れて来た知人を二階の部屋に泊める―前は夫婦の仲人で妻も好意的(19:30)、後は夫の戦友たちで妻からひんしゅくを買う(1:02:44)
  5. 「彼岸花」夫の着替え四種(起承転結)―娘の縁談話(11:42)、結婚相手を勝手に決めた娘に対する怒り(1:06:54)、娘の結婚を許すが式には出ない(1:20:35)、仕方なく娘の結婚式に出る(1:33:40)
  6. 「お早よう」支払滞納―婦人会の会費(03:42)と給食費(1:12:59)/家電製品の購入―洗濯機(9:56)、テレビ(1:25:17)/訪問販売―押し売り(26:32)、防犯ベル(33:28)、販売ではないが翻訳の依頼(21:19, 1:04:15)、台詞だけだが自動車のオースチン(23:18, 1:21:11)、最後は家電製品(1:25:17)で目出度しめでたし
  7. 「秋刀魚の味」妻が独り食い―葡萄(17:06)と夕飯(1:18:08)。前は先に寝たがる夫に不満だが、後は夫を連れ出した義父に好意的

   

*「父ありき」にある行儀の悪さは、芝居としての直接の意味はありませんが、親の躾を無視している内に死別する、と考えると辛いものがあります。

   

 

 

 

贔屓

 

「東京暮色」冒頭の小料理屋「小松」では、女主人お常の台詞「旦那、牡蠣いかがですか、一緒に来たんですけど 的矢 まとや のが」の後、志摩、 安乗 あのり 波切 なきり 賢島 かしこじま (ここは真珠の養殖が行われている)などと筋に絡まない地名がぽんぽん出て来ます(04:27)。この場面は唐突な感じですが、これらは三重県の湾岸一帯の名で、小津自身が育った地方の宣伝をしているのです。恥ずかしながら知っているものが一つも無かった。近い処で御前崎、浜名湖(ここは鰻と牡蠣の養殖が行われており、潮干狩りも出来る)、 久能 くのう (苺狩りができ、山を登ると動物園がある)、三保(水族館がある)、 興津 おきつ なら言える。

 

「お早よう」はキノエネ醤油の箱がたびたび映ります。おでん屋では一回だけだですが(*付き)、家庭にあるものは移動までして、すべて合わせると八場面もあります(09:22, 16:23, 24:41, 32:18, 36:00*, 59:54, 1:10:51, 1:14:05)。そのうちの二ショットは作品の予告編(㉘第一集)でも使われています。この箱は醤油瓶を何本も詰めておくものなので、一般家庭に置かれることはないはずですが、それでもキノエネ醤油を宣伝するのは、そこが小津の妹登久の嫁ぎ先だったから。「お早よう」製作時の小津の日記に「野田から 信三(小津の弟) 醤油もって来所」(昭和34年 2月 3日)とあります。さらに「秋刀魚の味」では恩師の佐久間(東野英治郎)が住む場末の横丁に、キノエネ醤油の看板が掲げられています(26:32, 34:33)。

 

「浮草」の床屋「小川軒」のあい子(野添ひとみ)には同姓で敦子という名のモデルあり。蓼科の雲呼荘で小津が脚本執筆中に茅野の店から出張サービスをしていたとのこと(蓼科映画祭)。小津の日記に「茅野の床屋敦子来て髪を刈ってもらふ」「小川軒敦子くる 散髪」等とあります(昭和35年 2月26日、同年 5月24日)。

 

【参考文献】

 

 (本文ここまで)




 

 

 

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